研究論文の翻訳は、なじみのない分野や言語を理解する助けになります。ただし、結果を引用するとき、数式を解釈するとき、正式な提出物を準備するときには、原典の代わりにはなりません。
PDFを、構造を持った証拠として扱ってください。要旨に書かれた主張、手法に示された条件、表に載った数値、考察に記された限界は、翻訳後も互いに対応していなければなりません。
分野と必要な翻訳の種類を特定する
アップロードする前に、論文のタイトル、著者、出典、版を記録します。その翻訳結果が私的な読書用なのか、グループでの議論用なのか、投稿を想定した文章なのかを決めてください。用途によって、言語面と専門面で必要な確認の水準は変わります。
理解に本当に影響する用語を、少数選び出します。翻訳の指示には、その用語の分野と、望ましい訳語を書きます。たとえば「この論文は経済学における因果推論を扱っています。変数名は変更せず、確立された計量経済学の用語を使ってください」といった具合です。これは指示文の一例であり、分野ごとの専門的な査読を組み込んだサービスではありません。
略語は、その定義と結びつけたままにします。見慣れた略語でも、別の分野では違う意味を持つことがあるため、記憶だけに頼って正式名称に置き換えないでください。訳が定まらない用語は、根拠のない意味を断定的に当てるのではなく、注記を付けてそのまま残します。
言語を変える前にPDFを確認する
本文から一文、そして難しいページから一文を選び、選択してコピーしてみてください。要旨では問題なく動くテキストレイヤーでも、段組み、注、スキャンした付録ではうまくいかないことがあります。コピーした文字の並びが崩れる場合、翻訳は誤った順序から流暢な文章を作り出してしまうかもしれません。
スキャンの場合は、文字、小さな記号、注の記号が判読できるか確認します。OCRと翻訳のワークフローでは、認識の問題と言語の問題を切り分けるべき理由を説明しています。
arXivからダウンロードした場合は、その識別子と版を保持しておきます。arXiv論文の翻訳ガイドでは、この出典に固有の準備を扱っています。ここで述べる手順は、より一般にPDF論文へ当てはまるものです。
次の作業に合った出力を選ぶ
ファイルをPDF Craftにアップロードし、必要な出力を選びます。翻訳結果はPDFで出力できます。EPUBやMarkdownは変換した内容に使えます。別の言語も必要なときは、翻訳を有効にして対象言語を選んでください。
一節を編集したり、研究ノートを作ったりするならMarkdownが向いています。文字サイズを変えながら通読するならEPUBです。ページ単位の引用や複雑な図表が必要なら、元のPDFを保管しておきます。これらの出力は、ページの配置が元と完全に一致することを保証するものではありません。
処理を確定する前に指示を追加します。処理が終わったら結果をダウンロードし、元のファイルとは別に保管してください。利用料金は料金で最新の内容を確認しましょう。PDFのファイルサイズだけから費用を見積もらないでください。
数式・表・結論をまとめて確認する
まず、読むうえで重要な結果を一つ選びます。その結果を、要旨、該当する表や図、考察へとたどってください。対象となる集団、条件、限界が変わっていないことを確かめます。
数値は、単位やラベルとセットで確認します。分母、比較群、信頼区間を欠いた値は、もはや同じ知見を表していないかもしれません。数式の添字、符号、式番号への参照は、翻訳結果の表示だけでなく、元の画像と照らし合わせてください。
図については、本文だけでなく、キャプションと凡例も読みます。画像が保持されていても、その中の文字がすべて翻訳されたとは限りません。情報量の多いページでは、段の変わり目や、ある説明がその定義対象の数式のそばに残っているかを確認します。
より詳しい点検の方法は技術文書のOCRチェックリストにまとめています。表現や主張に不明な点が残る場合は、その分野の専門知識に頼ってください。翻訳システムは科学的な妥当性を検証する手段ではありません。
参考文献と付録も確認範囲に含める
論文の主要な論旨だけでなく、末尾の各節も確認します。付録の定義、補足の前提、データに関する注記が、先に述べられた主張を制限していることがあります。
著者名、年、識別子、URL、版に固有のページ参照は、引用元をたどれるようそのまま残します。訳したタイトルや引用文を示す必要がある場合は、求められる引用様式に従ってください。書誌情報を独自に作り変えないでください。
正式に引用するときは、元の該当箇所に戻り、どの表現が自分の翻訳なのかを明示します。流暢な読書用の翻訳があっても、論文の再公開が許されるわけでも、学術誌の編集上の要件を満たすわけでもありません。投稿前に、提出先の最新の指示を確認してください。
元のPDF、書き出したままのファイル、訳語を選んだ際の記録、確認済みの翻訳をまとめて保存します。この記録があれば、後から読む人は、著者が書いた内容と、文字認識・翻訳・編集によって変わった箇所を区別できます。