
整った段落のなかに、マイナス記号の欠落が隠れていることがあります。脚注は存在していても、別の記述につながっているかもしれません。数式や表、注釈を含む文書では、変換が完了したかどうかを確かめるだけでは足りません。
このチェックリストは、どこを修正すべきか、もう一度変換し直す価値があるかを見極めるためのものです。レビューの進め方であり、数ページを確認すれば文書全体が正確だと保証できるという話ではありません。
異なる種類の失敗が表れるページを選ぶ
まず通常の本文ページを基準として選び、そこに最も難しい例を加えます。数式が密集したページ、見出しが結合された表、注釈ばかりのページ、段組みのページなどです。文や注釈が次ページに続いている箇所も入れておきます。
なぜそのページを選んだのかを書き留めます。「42ページ:下付き文字が薄い」のほうが「適当なページ」より役に立ちます。同じ特徴を持つ問題が繰り返し見つかったら、その特徴を持つ後方のページも追加します。
元のPDFは、ダウンロードした出力のそばに置いておきます。翻訳も必要な場合は、まず翻訳前の変換結果を確認するとよいでしょう。認識と翻訳は別の工程であり、翻訳者が誤って認識された表現を直してくれるとは限りません。
PDF Craftでは、読むためのEPUBと編集するためのMarkdownを選べます。形式はアップロード後、タスクの設定で選択します。確認するときは、実際に使う閲覧アプリやエディタでファイルを開いてください。表示のされ方によって、正しく認識された内容の見え方が変わるためです。
数式を記号ごとに照合する
単純な等式だけでなく、いくつかの要素を含む式を選びます。次の点を確認します。
- マイナス記号とプラス記号、乗算記号、小数点。
- 元のフォントで見分けにくいギリシャ文字とラテン文字。
- 下付き文字、上付き文字、累乗、添字。
- 分子、分母、括弧、分数の範囲。
- 総和や積分の範囲、式番号。
自分の知識から期待する式ではなく、画像と照らし合わせてください。見慣れた式ほど、この版での記号や前提の違いを見落としやすくなります。
続いて、その式の直前と直後の説明を確認します。変数や式への参照が、正しい式につながっている必要があります。式番号が誤って式の一部に取り込まれると、表記だけでなく、論の展開をたどる手がかりも変わってしまいます。
Markdownのソースでは記号が正しいのにプレビューで誤って表示される場合は、PDFを再度処理する前に、エディタの数式表示の対応を調べます。表示の問題と認識の問題では、対処の仕方が異なります。
表は数字の羅列ではなく関係として確認する
1つの表を丸ごと選び、抜き出した各値が、行見出し・列見出し・単位・注記のどれに対応するかを照合します。結合された見出しや空欄にも注意してください。空欄は「該当なし」を意味するとは限らず、ゼロではないかもしれません。
1列ずれてしまった値、続きの表が新しいデータとして扱われた箇所、上付きの注記記号が指数と誤認された箇所を探します。合計や符号も確認しますが、別の数字のほうがもっともらしいという理由だけで、意外な値を黙って「修正」しないでください。印を付けて元の文書に戻ります。
表題と近くの説明も読みます。正しい表でも表題が誤っていれば、誤解を招きます。元の文書に幅の広い表がある場合は、実際のEPUBリーダーやMarkdownエディタで、実際に近い幅で表示を確かめます。
脚注を本文と注の両方向からたどる
まず本文中の記号から始めて、対応する注を見つけます。記号のラベル、注の全文、そしてその注がどの記述を補足しているかを確認します。次に注から始めて、対応する本文中の記号を特定します。こうすると、テキストとしては残ったものの本文とのつながりを失った注を見つけられます。
章ごとに番号が振り直されている場合や、アスタリスクなどの記号による注、次ページに続く長い注も確認します。ページ下部の柱やページ番号、柱見出しが注の一部に紛れ込んでいないかも見ます。
引用文献については、識別情報や該当箇所を元の文書と照合します。翻訳された説明では表現が変わることがありますが、DOIや著者名、引用ページは意図した文献を指しているはずです。EPUBにリンクが付いている場合は、使うリーダーで試します。戻るリンクがあれば、それも確認してください。
修正方法を決める前に問題を記録する
小さな問題一覧を作ります。
| 箇所 | 見つかった問題 | 影響 | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| 印刷版54ページ、式3 | 下付き文字が通常のテキストとして認識された | 変数の区別が変わる | 修正し、似た式も確認する |
| PDF71ページ、表6 | 値が誤った見出しの下に入った | 解釈が変わる | 表全体を見直す |
| 第4章、注2 | 別の注にリンクしている | 根拠のつながりが切れる | 章内の注の対応を確認する |
これらは記入例であり、PDF Craftでの検証で得られた結果ではありません。
意味、参照、読み順に関わる修正を優先します。ぼやけたページや歪んだページに誤りが集中している場合は、より良いスキャンを探します。ほぼ正しいMarkdownファイルに個別の修正が必要なだけなら、作業用のコピーをエディタで直し、ダウンロードしたままのファイルは残しておきます。表示だけの問題なら、別の表示環境で試します。
修正や再実行のあとは、把握している問題を再確認し、その周辺の内容も見ます。記号が直っていても、注の最後の文がまだ欠けていれば十分ではありません。大きなタスクを繰り返す前に料金を確認し、変換した文書を根拠として使うときは、いつでも元の文書を参照できるようにしておきます。