電子書籍を一節ずつ翻訳していくのは、最終章にたどり着く前にうんざりしてしまいます。完成したEPUBが手元にあるなら、ファイル単位で処理するほうが現実的です。本を一度アップロードし、言語と出力形式を選んで、ダウンロードできる版を確認する、という流れになります。
準備で大事なのは、最終的に何が必要なのかを決めておくことです。読むための版、原文と対訳を並べた学習用の版、出版を前提とした本では、必要な確認の量が違います。どの翻訳ツールも電子書籍を丸ごと扱えるはずだと考えず、仕上がりの形に合わせて進め方を選びましょう。
使える元ファイルを用意する
アップロードする前に、元のファイルをEPUBリーダーで開いてみてください。章のナビゲーション、いくつかの画像、脚注を確認します。元ファイルがすでに壊れていると、あとで起きた問題が翻訳によるものなのか判断しにくくなります。
手を加えていない原本は残し、新しい版は別の名前で保存します。たとえば book-original.epub、book-spanish.epub、book-bilingual.epub なら、download-final2.epub より中身が分かりやすくなります。PDF Craftのアップロード手順のためにEPUBの内部ファイルを書き換える必要はありません。
入力の種類によって、準備のしかたも変わります。
- EPUB: 読める状態の完全な本から始めます。アップロードの上限は最新の条件を確認してください。
- スキャンしたPDF: OCRと変換でテキストと読む順序を取り出します。ページの画像は選択できる電子書籍のテキストではありません。スキャンしたPDFをEPUBにするガイドを参照してください。
- ストアで購入した保護付きの本: 利用が認められた使える版を用意します。リーダーアプリで読めることは、書き出せるEPUBがあることを意味しません。
- 著者の原稿: 修正できる編集用のソースを手元に残します。翻訳した読書用ファイルは、出版用のソースや編集作業の代わりにはなりません。
オンライン翻訳・Calibre・人力翻訳のどれを選ぶか
| 方法 | 自分で担う作業 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| オンラインのEPUB翻訳ツール | ファイルと指示を用意し、出力を選び、ダウンロードを確認する | 翻訳エンジンを設定せずに、読める完成版が欲しい |
| 翻訳プラグインを入れたCalibre | プラグインと使うエンジンを導入・設定し、サービスの規約と出力を確認する | すでにCalibreで電子書籍を管理していて、設定を自分で握りたい |
| 翻訳者と編集者による作業 | 範囲、用語、修正の進め方、電子書籍の制作について合意する | 文体や出版、専門性の高い分野で、専門家の継続的な判断が必要 |
Calibreの通常の形式変換では本は翻訳されません。別途提供されているEbook Translatorプラグインが、設定したエンジンを通じて翻訳を行います。デスクトップの画面があるからといって、翻訳がオフラインで行われるとは限りません。データの扱いは選んだエンジンと設定次第です。
人力で依頼する場合は、プロジェクト全体に入る前に、試し訳と成果物について合意しておきます。見積もりに翻訳、修正、組版、最終的なEPUBの確認が含まれるかを確認してください。「翻訳済みの原稿」と「すぐ読めるEPUB」は別の成果物です。自動翻訳の出力は読書や下訳として役立ちますが、実際に確認していないのに専門家の校閲済みとうたってはいけません。
PDF CraftでEPUBをオンライン翻訳する
- EPUB翻訳ツールで本を丸ごとアップロードします。デスクトップアプリを入れなくても、オンラインで作業を完了できます。
- 翻訳先の言語を選びます。 どのページから来たかではなく、意図する言語を確認してください。URLが作業設定を自動で決めてくれるわけではありません。
- 翻訳のみか対訳かを選びます。 翻訳のみは新しい言語だけで読むための出力です。対訳は原文の各段落の前に対応する翻訳が置かれるので、見比べやすくなる一方、本は長くなり移動に手間がかかります。
- 必要に応じて簡潔な指示を加えます。 分野と、いくつかの好みを伝えます。たとえば「ラテンアメリカのスペイン語を使い、登場人物の名前は変えず、自然な話し言葉にする」といった具合です。こうした要望は翻訳の指針になりますが、重要な表現が守られたかは確認してください。
- 設定を確認して送信します。 初めての利用者には試用クレジットが付き、処理は利用量に応じて課金されます。現在の料金は料金で確認してください。
- 完了したタスクからダウンロードします。 分かる場所に保存し、使い慣れたEPUBリーダーで開きます。
PDFから始めてEPUBやMarkdownを出力する場合、別の言語にしたいときは翻訳を明示的に有効にしてください。これらの出力では、変換だけを行うのか翻訳も行うのかは別の選択です。
読み始める前に、確認箇所を絞って点検する
冒頭の数ページをさっと流し読みするだけでは足りません。リスクの異なる箇所を選んで確認します。会話、数字や否定を含む段落、技術的な説明、注記などです。中ほどと終わり近くの章も一つずつ見ておきましょう。
意味については、話し手、動作、条件の限定が変わっていないかを確かめます。「not」の抜け、日付の変化、代名詞の誤りは、ぎこちない形容詞よりも大きな問題になりえます。繰り返し出てくる用語は、最初の定義だけを見ずに何箇所か検索して確認してください。
構造については、目次を開いて項目をたどります。フォントサイズを変えて、文字の切れや不自然な折り返しがないか見ます。脚注をたどり、元の位置に戻れるかを確認します。画像のキャプションや章の境目の前後の文を原文と比べます。
| 見つかった問題 | 次に取るとよい対応 |
|---|---|
| 章によって名前が変わる | 繰り返し出てくる箇所を見直し、次の作業の前に希望を明確にする |
| 意味が取りにくい箇所がある | 翻訳だけから推測せず、原文の文脈と比べる |
| ナビゲーションや注記が壊れている | 元のEPUBを確認し、別のリーダーでも試して、ファイルの問題か表示の問題かを見分ける |
| 出版できる品質が必要 | 配布の前に、専門家による校正と電子書籍の仕上がり確認を依頼する |
こうした確認を通過したら、いつものアプリで読み進めるか、PDF Craft Desktopで原文と翻訳を並べて読み、整理します。もう一度見たい箇所に備えて、原文はすぐ参照できる場所に置いておきましょう。