翻訳された研究論文のレビューは、序論の文章を磨くことから始めるべきではありません。まず、自分が引用したり判断の根拠にしたりする可能性が最も高い結果を特定します。その主張や数値、参考文献が変わってしまっていれば、他の箇所の文章がどれほど整っていても、そのファイルを信頼することはできません。
原文と翻訳版のファイルを並べて開いておきましょう。レビュー用のメモは別に用意し、事実の誤りを指摘するのか、表現の好みを述べるのかを区別できるようにします。
要旨と結論を一組として読む
原文の要旨で中心となる主張に線を引き、翻訳された要旨でそれに対応する箇所を探します。手法、対象、比較、示された結果をそれぞれ確認してください。同じ作業を結論でも繰り返します。
次に、翻訳されたこの2つの箇所を比べます。結論は要旨より強いことを述べていないでしょうか。その違いは原文にもあるのか、それとも翻訳によって生じたものなのかを確かめます。「このサンプルでは」といった限定表現は、省略可能な補足ではなく、意味を左右する重要な条件である場合があります。
断定の強さにも注意してください。「示唆する」「整合する」「実証する」は互いに置き換えられる言葉ではありません。より強い動詞のほうが読みやすく感じられるという理由だけで、慎重な表現を強めてはいけません。
一見した矛盾が原文にすでに存在する場合は、原文に関する疑問として記録します。翻訳を編集するということは、著者の論旨を黙って修正してよいということではありません。
数値は単位・条件・否定表現とあわせて確認する
結果の中から重要な値を選び、原文と直接比較します。サンプルサイズ、割合、範囲、しきい値、解釈を変える数値はすべて対象に含めます。確認すべき箇所を探すには数字を検索すると便利ですが、漢数字や文字で綴られた数、欠落した記号まで見つかるとは限りません。
各数値に付随する文言も確認します。「以下」「少なくとも」「有意ではない」「ただし〜を除く」といった表現が抜けると、結論が逆になることがあります。分母や群のラベルは、分子と同じくらい重要です。
小数点の表記や単位は、文脈の中で確認します。英語で見慣れない表記だからといって、数値の書き方を勝手に変換してはいけません。句読点の誤りなのか、異なる慣習によるものなのかを判断する前に、表や手法の定義と照らし合わせます。
レビュー記録の書き方の一例を示します。「表2の介入群の列:値と単位を原文と照合すること。翻訳された考察は対照群について述べているように見える」。この例は、実際に確認した相違点と該当箇所に置き換えてください。
図を1つ選び、自分の言葉で説明する
結論の中心となる図を1つ選びます。翻訳版を使って、軸が何を表しているか、各系列が何を意味するか、どの条件を比較しているか、キャプションに何が書かれているかを読み取ります。そのうえで同じ作業を原文で行います。
違いがあれば、どこを見直すべきかが分かります。グラフ本体、凡例、キャプション、本文のいずれかです。画像がそのまま残っていても、軸ラベルの誤訳やサンプルに関する注記の欠落を補うことはできません。
表の場合は、値を解釈する前に列見出しと単位を読みます。数式の場合は、符号、添字、番号、変数を定義する文を確認してください。数式と脚注のチェックリストを使うと、文字認識の問題と言語の問題を切り分けやすくなります。
引用文献を実際の文献までたどる
本文中の引用をいくつか選び、参考文献リストまでたどります。引用する予定の主張に付いているものも必ず1つ含めてください。著者、年、タイトル、識別子を、元の論文または引用された文献と照合します。
体裁が整っているという理由だけで、その参考文献を正しいと判断してはいけません。年の誤りや著者名の表記統一は、別の文献をそれらしく見せてしまいます。注記の番号が、近くの引用ではなく、正しい補足説明を指しているかも確認してください。
arXivの原稿を使った場合は、参照したバージョンを特定できる形で残しておきます。別の読者が異なるバージョンを取得すると、タイトルが同じでもページや数式の位置がずれている可能性があります。
読むための版と投稿できる原稿を区別する
PDF Craftは、読んだり後続の作業に使ったりするための翻訳PDFやその他の対応形式の出力を作成できます。ただし、研究内容の正しさを保証するものでも、引用を承認するものでも、資格を持つ編集者の代わりになるものでもありません。
投稿を予定している場合は、そのジャーナルの最新の投稿規定、引用スタイル、開示要件を確認してください。学術的な内容で解釈が定まらない箇所は、その分野と言語に詳しい人に確認を依頼します。未確認の出力を、専門家のレビューを受けたものとして扱ってはいけません。
レビューは、未解決の論点と修正した箇所の一覧を作って終えます。編集後の版だけでなく、元の出力も保管しておきましょう。そうすれば、どの主張をどの資料と照合して確認し、なぜ表現を変えたのかが分かり、レビューの過程を再現できます。