マニュアルを翻訳する際は、読者が入力するコマンドはそのまま残し、操作手順を読者の言語で説明する必要があります。製品の識別子、数式、名称についても同様です。そのまま変えずにおくことで意味を持つテキストがあるのです。
PDFを翻訳に出す前に、変えずにおくべきものを決めておきましょう。「重要なものはすべて保持してください」といった漠然とした依頼より、短く具体的な指示のほうが確認しやすくなります。
本文と、一字一句そのままにすべき情報を分ける
代表的なページを読み、前後の文とは独立して文字そのものが意味を持つ項目に印を付けます。コマンド、ファイルパス、URL、メールアドレス、バージョン表記、製品型番、数式の変数などが該当することが多いでしょう。
次に、扱い方を三つに分けます。
| 内容 | 考えられる扱い | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 説明の段落 | 通常どおり翻訳する | 元の指示や主張が保たれているか |
| 識別子や実行可能なコマンド | 原文のまま残す | 読者が同じものを特定し、使えるか |
| 定訳のある専門用語 | 採用した訳語を使う | 一貫して使われ、分野に適しているか |
ブランドのスローガンはブランド名とは別物です。名称は変えずにおき、スローガンは読者に向けて翻訳する、ということもあります。大文字で始まる語句を機械的にすべて残すのではなく、文書の目的に照らして判断してください。
コードと数式は文脈ごと守る
コード例では、引用符、インデント、変数名、マイナス記号を変えるだけで動作が変わることがあります。確認するときは、実行される部分とコメントや前後の説明を切り分けておきましょう。
数式では、どの変数名や記号をそのまま残す必要があるかを書き留めます。添字、単位、式番号、記号に結び付いた定義は変えずに、説明の文だけを翻訳します。訳文が流暢であっても、数学的な正しさが確認できたことにはなりません。
名称が曖昧なこともあります。組織に正式な訳名がある場合もあれば、人名に決まった表記が必要な場合もあります。根拠のある定まった表記があればそれを示し、新たな現地語名を勝手に作るのは避けてください。
安全に関わる文書については、技術マニュアルのガイドで、厳密な識別子と操作手順の関係を扱っています。
結果を照合できる指示文を書く
翻訳の指示欄には、文書の主題と、特に重視したい点をいくつか書きます。たとえば次のように。
ソフトウェアのインストールマニュアルです。コマンド、ファイルパス、API識別子、製品型番は変更しないでください。説明文はわかりやすい日本語に翻訳してください。原文でXと呼ばれているハードウェア部品には「コントローラー」を使ってください。
これはあくまで記入例です。例を実際の文書の用語に置き換え、処理に不要な機密情報は書かないでください。
PDF Craftの指示は翻訳を導くためのものであり、強制力のある用語集でも、保護されたページ領域の指定でもありません。現在の画面には、一部の競合製品にあるような範囲選択ボックスや区切り線の操作機能はありません。指示を書いたからといって、その領域が完全にスキップされる保証にはなりません。
文字列を機械的に固定したり、規制された用語の使用を強制したりする必要がある場合は、そうした制御を明示的に備えた方法を検討し、それでも納品されたファイルを確認してください。
ダウンロード後に保持された内容を確認する
一字一句そのままにすべき項目をいくつか選び、原文と一文字ずつ比べます。型番や特徴的なコマンドを結果から検索し、見つかった箇所を一つずつ文脈の中で確認しましょう。
似た字形、直線の引用符と曲線の引用符の違い、URLに紛れ込んだ空白、意味が読み取りにくくなる折り返しなども確認します。OCRが別の文字として誤認識した箇所は検索で見つからないため、原文の該当箇所もいくつか直接見てください。
長い文書では、繰り返し登場する名称や用語の一覧を作り、見つけた表記ゆれを記録します。どちらの形が正しいかを確定してから、作業用のコピーで用語を修正してください。同じ語が繰り返されているからといって、常に同じ概念とは限りません。
最終的な基準は原文に置く
PDF Craftでは、PDFをアップロードし、出力形式と翻訳先の言語を選び、指示文を追加してから、開始前に処理内容を確認します。完了した結果をダウンロードし、原文と比べてください。現在の利用料金は料金に記載しています。
文言が保持されているかと、レイアウトが保持されているかは別々に確認します。コマンドが変わっていなくても、狭いテキストボックスの中で切れていることがあります。ロゴがそのままでも、その周囲のラベルが未翻訳のまま残っていることもあります。こうした見た目の関係は、PDF書式チェックリストで確認してください。
原文と書き出した翻訳は、編集したコピーとは別に保管しておきます。そうすれば、問題のある文字列が原文由来なのか、文字認識によるものか、翻訳によるものか、後からの修正によるものかを、別の読者が確かめられます。