
人名は、一冊の本の中でいくつもの形で現れます。地の文ではフルネーム、会話では肩書き、友人同士では愛称、といった具合です。専門用語も、日常語と同じ単語でありながら、より狭い意味を持つことがあります。こうした点をあらかじめ決めておけば、本全体の翻訳を指示しやすくなり、確認もしやすくなります。
網羅的な辞書を作る必要はありません。推測を含んだり本文と食い違ったりする長いリストより、短くても正確なメモのほうが役に立ちます。
原文と訳し方の対応を短くまとめる
繰り返し出てくる名前や用語、重要な概念を定義する語、訳し方によって混乱しそうな語を選びます。あとで探し直せるよう、原文の形も訳し方の希望と並べて書いておきます。
| 原文の項目 | 記録する訳し方 | 注意しておきたい文脈 |
|---|---|---|
| 人名 | 定着した表記、または原語のまま | 肩書きや愛称と区別する |
| 創作された地名 | 希望する訳語 | 似た語が別の場所を指していないか確認する |
| 専門用語 | 目標言語での標準的な訳語 | 分野や定義も添える |
| 略語 | 残すか展開するかを適宜決める | 本の中で最初に定義される箇所を特定する |
これはあくまで手元の準備メモであり、読み込み可能な用語集機能を前提としたものではありません。PDF Craftでは、該当する希望を翻訳指示の入力欄に書きます。指示は訳語の選び方を導くものであって、すべての出現箇所をデータベースのルールどおりに従わせるものではありません。
用語に自信が持てないときは、訳語をでっち上げるのではなく、不確かであることを書き添えておきます。誤った訳語を指定すると、それ以外はもっともらしい結果でも、解釈が難しくなることがあります。
本の内容を語り直さずに、分野と文体を添える
分野やジャンル、想定する読者を書き添えます。経済学の教科書、歴史エッセイ、現代小説では、同じ単語を使っていても適切な選択が異なります。
たとえば、技術書向けの指示は次のようになります。
経済学の入門書です。標準的な経済学の用語と、明快な英語を使ってください。人名、製品名、コードの識別子は変更しないでください。
小説なら、語り手の口調や、意味のある肩書きを残すかどうかを指定できます。筋書きや人物関係を推測して書くのは避けます。文脈は正確なときにだけ役に立ちます。
地域ごとの好みも指定できます。イギリス英語、アメリカ英語、あるいは特定のスペイン語圏の読者向け、といった具合です。逐語的な語順と自由な意訳の両方を求めるのではなく、本が意図する文体に合った指示にそろえます。
判断を変える指示だけを残す
完璧さを求める一般的な要望や、同じ形容詞の繰り返しは削ります。実際に自分が確認するであろう少数の選択肢を優先します。無関係な長い文章が混ざると、その選択肢が見つけにくくなるうえ、作業に不要な個人情報を明かしてしまうこともあります。
アップロードする前に、訳し方のリストの綴りを確認し、矛盾がないか見て、それぞれの指示が実際の原文に当てはまるかを確かめます。元のEPUBと一緒に控えを保管しておきます。簡潔な提出用メモの例は翻訳指示の例をご覧ください。
元のEPUBを開き、内容と目次を確認します。用語のメモがあっても、欠けている章を補ったり、変換の途中で壊れたテキストを確実に復元したりすることはできません。
EPUB全体を、出力形式を明確にしてから送信する
EPUB翻訳ツールでファイルをアップロードし、翻訳先の言語を選び、翻訳のみか対訳かを選びます。対訳を選ぶと各原文の直後に訳文が置かれるため、用語の確認がしやすくなります。
メモを追加し、現在のタスクの上限と料金を確認してから送信します。新規ユーザーには試用クレジットが付与され、翻訳は利用量に応じて課金されます。翻訳が完了したファイルをダウンロードし、元のファイルは別に保管しておきます。
繰り返しと意味をあわせて確認する
重要な名前を、序盤の章と終盤の章で検索します。綴りだけでなく、肩書きや愛称も比べます。専門用語なら、定義と後半での使われ方を確認します。同じ訳語で統一されていても、文脈によって意味が変わるなら誤りでありえます。
章ごとの違いは、原文の特徴的な表現とともに記録します。一つの単語に複数の意味がある場合、最初の修正手段として一括置換を使うのは避けます。ばらつきが妥当かどうかを確かめてから、誤りとして扱います。
用語の周辺にある否定表現、数字、参照先も確認します。用語が統一されているからといって、主張全体が正確であるとは限りません。出版など、正確さが特に求められる用途では、必要に応じて専門家に確認を依頼します。
ファイル自体の表示がおかしい場合は、EPUBのトラブルシューティングガイドを参考に、言語面の判断と、リーダーや構造上の問題を切り分けてください。準備をしっかりしておけば、結果を判断する基準が明確になります。ただし、確認が不要になるわけではありません。