扱いにくいスキャンを処理する前に、まずどのような不具合があるのかを特定します。文字の傾き、ページの向きのずれ、ぼけ、綴じ部分の濃い影、欠けた余白は、それぞれ対処法が異なります。補正のオプションをすべて適用すると、ノイズを消すのと同じくらい簡単に、必要な印まで消してしまいます。
元のファイルは手を加えずに残しておいてください。本全体に適用する前に、代表的な数ページを複製し、そのコピーで変更を試します。
補正できる不具合と、失われた情報を切り分ける
| 不具合 | 確認するポイント | 次に取るべき手順 |
|---|---|---|
| わずかな傾き | 行が傾いているが、文字は鮮明なまま | 傾き補正(deskew)を試す |
| 横向き・上下逆のページ | 読む向きが正しくない | 回転を修正する |
| 綴じ部分の影 | 綴じ目に近づくほど小さな文字が消える | できればより良い状態で撮り直す |
| ぼけ・手ぶれ | 文字の線がにじんで重なる | 再スキャンするか、より鮮明な原本を入手する |
| 欠けた余白 | 文字や注釈記号が切れている | 欠けのない元ページを用意する |
| 斑点・黒い枠線 | ノイズが小さな文字と紛れる | 内容を消さない範囲で控えめな補正を試す |
すでにぼけた画像を拡大しても、失われた文字の細部は戻りません。文脈から推測したもっともらしい単語は、原本を復元したことにはなりません。本当に読めない箇所は、そのまま不明として扱い、流暢なOCR結果や翻訳結果を根拠にしないでください。
外部ツールによる前処理は目的に合わせて使う
ここで紹介するのは外部ツールでの下準備であり、PDF Craftの画像編集機能ではありません。Adobeはスキャン画質を高める機能を「スキャンとOCR」の項目で説明しています。お使いのバージョンの最新の手順に従い、作業用のコピーを保存し、置き換える前に結果を確認してください。
コマンドラインで作業する場合は、OCRmyPDFのクックブックで回転と傾き補正の違いが説明されています。適切に用意したテストファイルに対しては、次のようなオプションが記載されています。
ocrmypdf --deskew --rotate-pages input.pdf output.pdf
この例は別ファイルとして出力するものであり、PDF Craftのすべての処理の前に必ず実行しなければならないコマンドではありません。外部ツールはそのドキュメントに従って導入・設定し、必要に応じて適切な認識言語を選び、実際の入力に対する警告に目を通してください。無関係なチュートリアルが使っているという理由だけで、破壊的な補正オプションを追加しないでください。
Tesseractの品質に関するガイドでは、入力の品質や傾きが認識結果に与える影響が説明されています。これはこのOCRエンジンについての助言であり、1つの万能な設定でどんな本も解決できるという約束ではありません。
同じページを処理前後で比較する
ふつうのページと、小さな文字・注記・表を含む難しいページを1ページずつ選びます。それぞれ元の位置はそのままにしておきます。意味のある調整を一度に1つだけ加えることで、何が役に立ち、何が画像を損なったのかが分かります。
見た目と認識されたテキストの両方を比較してください。句読点、小数点、マイナス記号、上付き文字、表の細い罫線を確認します。コントラストを強くするとページはきれいに見えますが、重要な細い線が消えてしまうことがあります。
余白と綴じ部分も確認します。黒い枠線を除くトリミングが、脚注記号まで切り落としているかもしれません。補正によって本文が読みやすくなっても、図版や手書き文字が損なわれることがあります。目立つ段落だけを見て成功と判断しないでください。
設定と、解決できなかった不具合を記録しておきます。小さなサンプルは確認にかかる負担を見積もる助けにはなりますが、本全体の精度を数値で示すものではありません。
原本が使える状態になってから、出力形式を決める
文字サイズを変えて読み続けたい場合はEPUBを選びます。編集や調査メモに使いたい場合はMarkdownを選びます。元のページの見た目を保ち、原本と照合できるようにしたい場合はPDFを残します。
PDFの作業画面で、準備したPDFをアップロードし、実際の出力形式と翻訳の設定を選びます。翻訳はEPUBとMarkdownでは任意ですが、PDF出力では翻訳が必須です。サイトのURLがこれらの選択を自動で決めることはありません。
初めて利用する方にはトライアル用のクレジットが付与され、処理は利用量に応じて課金されます。大量の書籍を処理する前に、現在の上限と料金を確認してください。PDF Craftは、損傷したすべての文字を復元したり、複雑なレイアウトを確認なしで再現したりすることを保証するものではありません。
最終確認では不確かな点を残す
ダウンロードしたら、同じ難しいページに戻ります。段落の順序、小さな注記、数式、綴じ目付近のテキストを比較してください。翻訳を伴う場合は、文が不自然に思えたら元の画像を確認します。誤りの原因は認識の段階にあるかもしれません。
処理後の確認については、スキャンPDFの翻訳ガイドで詳しく説明しています。OCRと翻訳のワークフローガイドでは、認識と意味の確認を別々に行う必要がある理由を解説しています。原本と準備用のコピーは一緒に保管しておけば、後から修正した経緯をたどれます。